本名:かんきつ中間母本農6号 通称農6
中間母本とは、品種改良を行うために利用される素材のことで、一般に商品としては流通していません。
農6は物語の中にもある通り、素材としての「縁の下の力持ちクラス」。大きさや皮の硬さなどから、商品としての品種選択からは漏れてしまい、専門家の内に「仕舞っておかれた」ものだったのです。
ところが、食べてみると「美味しい」。皮を剥くにもさほど気にならず、種もありません。その上シネフリン、フラボノイドなどの体に良い成分を多く含み、さらに作り手は「作りやすい」という、まさに「なんで仕舞っておかれたんだ!」というものでした。
「これは面白いフルーツじゃないか!」という訳で、その魅力に惹かれた愛好家が集結。ファンクラブこと「農6研究会」が発足され、農6は「まさる君」と名付けられ、世に出ることとなりました。
弘法屋はこの研究会を通じて、既存の物流・商流にこだわらない方法で、生産、評価、広報、販売の各担当者が「まだ世によく知られていない、美味しいものを広めよう」という思いを一つにして、お客様のもとに「まさる君」をお届けするために頑張っています。
「まさる君」って呼ばれる前の僕たちには、背番号しかありませんでした。
「かんきつ中間母本農6号」、あだ名が農6(のうろく)。
僕らは,身体が小さく硬かったので、みかん学校に入学すると、学校のルールで、「縁の下の力持ちクラス」に入りました。 背番号の前につく「中間母本」(ちゅうかんぼほん)というのは、校外には出られないけど、長所を生かして他の生徒のお役にたちなさい、という意味です。
ある日、僕達のクラス担任の吉田先生が、「君たちいい子達だから、少し、外の世界を見ておいで」と、ニコニコしながら、あるパーティに送り出してくれました。
初めてのことでドキドキしながら校内にあるパーティ会場に着くと、そこには驚くほど大きくて格好いいイケメンや、ツヤツヤ美人でいっぱいです。僕達がホントに小さく、ごつごつ硬いことに気がついて恥ずかしくなり、早く力持ちクラスに帰りたくなりました。 「なんで吉田先生は、わざわざ僕達をこんな所へ連れてきたんだろう…」。
その時です。仲間の一人を手に取った、知らない男の先生が叫びました。
「なんで、こんなウマいもんを仕舞っておくんだ!ちゃんと外に出しなさい!」
ちょっと乱暴で声高だったので、会場は静まり返りました。
僕もビックリしましたが、そっと周りを見回すと、後ろの方で吉田先生一人が、腕を組んで微笑んでいるのが見えました。
その日をきっかけに、僕達にはファンクラブが結成され、ちゃんとした名前を付けてもらえることになりました。
「まさる君」…味、香り、機能性でイケメンや美人に「まさる」って!